芋問題の解法 擬似マッサマンカレー

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炊き出し分野における長年の懸念のひとつが解決しました。

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くつした企画の炊き出しにおいては,季節を問わず,衛生面への配慮という観点から『禁じ手』としていることが実は幾つかございます。

そのうちのひとつが『じゃがいもの入ったメニューは避ける』というもの。全身これ糖質のお芋さんたちは,一度加熱してしまうと夏の終わりの線香花火並みに儚いもので,あっという間に傷んでしまいます。
夏場のカレーにジャガイモは入れない。おばあちゃんの代からの言いつけです。

他方,炊き出しという観点からいたしますとお芋さんたちほど魅力的な食材もそうあるものではございません。
おいしい上に腹持ちがよく,その上安価。ありていに言えば理想的な『かさ増し』になりうるわけでございます。

なんとか食中毒の危険を回避して安全にお芋を炊き出しに導入できないか。そんなことをぼんやり考え続けて幾星霜。
今回も撮影の炊き出し食材の買出しにとあるスーパーをうろついておりましたところ,あるものが目に入りました。
カントリーウェッジタイプの冷凍フライドポテト。
これだ。これなら長年悩んできた『芋問題』のブレイクスルーになってくれるに違いない。
浮き足立った当方,急遽想定していたメニューを覆して,こいつを使った炊き出しに挑戦することにしたのでした。

そのメニューこそが今回の『マッサマンカレー』なのです。

タイ人の知人・友人に聞いてみてもほぼ、
「よく聞くようになったけど食べたことはないよ」
…と答えが返ってくる,典型的な話題先行型名菜であるこのお料理は,タイのハーブ使いに中近東やインドの香辛料が交じり合った複雑な味と香りのカレーですが,都合のいいことに主な具材がジャガイモにピーナツ。芋問題の解決に挑戦するにはうってつけのメニューなのですね。

正直に申しますと最近流行の業務用食材販売系の小売店にたまさか置いてある『マッサマンカレーペースト』を使えばあっという間に出来てしまうわけですが,ネックは(少なくとも当方が暮らす環境においては)これが安定して手に入らないというところにあります。
そこで今回は,いつも手に入る材料だけでそれっぽく,そして安く作る方法を考えてみました。『擬似』をメニュー名に冠したのはそのためです。

当日は,さらに副菜のサラダも合わせて供しました。

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擬似マッサマンカレー 20人前

<具>

鶏もも肉 2キロ

バターピーナツ 1袋

カントリーウェッジタイプの皮付き冷凍フライドポテト 1袋

冷凍さやいんげん 1袋

たまねぎ 6個

 

<カレーペースト>

しょうが 2かたまり

にんにく 1個

たまねぎ 2個

シナモン 1びん

(以下『1びん』は100円ショップなどに売られている15グラム入りのものを指します)

オールスパイス(もしくはナツメグ) 1びん

クミン 1びん

唐辛子 適量

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※上記の代わりに,もし業務用食材を扱っている系安売りスーパーに売られているタイイエローカレーペーストが手に入る場合には,そこにシナモンとクミンを足すだけでかなりそれっぽくなる気がいたします。

 

<調味料>

鶏がらスープ粉末

ココナツミルク 2缶

ナンプラー

砂糖

レモン汁

 

■前日の仕込み

  • まずはペースト作りから。しょうがとペースト用たまねぎは皮を剥いてざく切りにし,皮を剥いたにんにくと共にフードプロセッサーに入れます。そこに粉末香辛料を加え,ペースト状に砕きます

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  • 鶏肉は1口大,たまねぎは繊維に沿って4つ割りにしておきます
  • 大鍋を中火の強火くらいの火勢で熱して油を敷き,ペーストを炒めます。香りが出てきたら鶏肉を加えてさらに炒め,肉の色が変わったらココナツミルクを注ぎ入れ,さらに空いた缶の半分ほどの量の水も加えます

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  • 煮立ってきたら凍ったままのさやいんげんとピーナツを入れます
  • 具材が十分に馴染んだら鶏がらスープ粉末,ナンプラー,砂糖,レモン汁を加えて,甘じょっぱ酸っぱい味に整えたらひとまず出来上がり。十分に冷めてからラップでふたをしっかり固定し,冷蔵します

 

■当日の供し方

  • ご飯を炊きます
  • 現場でお鍋を加熱し,煮立ったらクーラーボックスに入れておいた凍ったままのフライドポテトを入れ,火が通ったらご飯にかけてできあがり

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副菜:ガドガド風白菜サラダ

<ドレッシング>

ピーナツバター

スゥィートチリソース

レモン汁

ナンプラー

 

<具材>

白菜  半株

万能ねぎ 1束

かっぱえびせん 1袋

 

■前日の仕込み

  • 適当な広口ビンにピーナツバターをカレースプーンで山盛り2すくいくらい入れ,そこにスゥィートチリソース,ナンプラー,レモン汁を加えてかき混ぜます。(最初にレモン汁以外を入れ,仕上げにレモン汁を入れて酸っぱさを調整するほうが味が決めやすいように感じます)
  • 上記材料だけでゆるいマヨネーズくらいの硬さにならないようならば,少しだけ水を加えて緩めます

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  • 洗って水切りした白菜を繊維を断ち切るようにやや太めの千切りに,万能ねぎは子どもの人差し指くらいに切りそろえ,ビニール袋に入れて空気を抜き,冷蔵しておきます

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■当日の供し方

  • 白菜の入ったビニール袋にドレッシングを注ぎいれ,袋ごと揉んで馴染ませます
  • 袋を開いたところに,袋ごと砕いたかっぱえびせんを振りかけます
  • 適宜取り分けてカレーの横に沿えてできあがり

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タイの異文化混淆カレーと,インドネシアの名菜の簡易版。カレーを少しゆるめに作っておいても,冷凍フライドポテトを加えると若干とろみがつきますので,いい感じです。冷凍フライドポテトをフライにしない。これ,結構使えそうな予感がいたしますね。