それは，未曾有の震災に見舞われたときのこと。
ロケの炊き出しという分野にでも，少しでも出来ることはないか。そう考えたことがございます。
以下は，そんな時期に記された記事でございます。
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…これは単なる思い込みに過ぎないのかもしれませんが，『できる限り生の素材を用いる』というのはどうなのでしょうか。
当時，いつもの八百屋さんに行きましたところ，
買い占め問題のあおりで，実は魚河岸や生鮮市場の新鮮なものたちがだぶついているという話を聞きました。
で，あるのならば，支援物資に転用可能なレトルトや缶詰，備蓄の利く食料ではなく，
新鮮で，裏を返せば足の速い素材をうまく利用し，炊き出しに用いるということには，
なにかしらの意味があるのではないか。
くりかえしますが，これは思い込みかもしれません…
しかし，炊き出しにはいわゆる『腹もち問題』というものがあります。
激務でおなかの減ったスタッフさんやキャストさんの胃の腑を満たす，
ボリュームと，食事の後に続くであろう長時間の撮影に耐えるだけの体力をもたらす『腹もち』の必要性。
そのためには，穀類が必要です。
では備蓄の効かない生野菜で，穀類を賄えないか？
うってつけのお料理がありました。
以前，少人数での室内ロケの時に作ったところ，意外に腹もちがよくて好評だったものに，ちょっぴりアレンジを加えて，
さらに腹もち度をあげてみたものです。
『バブルアンドスクィーク』 １０～１５人前
ジャガイモ １キロ
キャベツ １個 （使われることの少ない，一番表面の固い葉っぱや芯がおいしいです。）
人参 大５本
ブロッコリ ２株
…その他，玉ねぎ，カリフラワー，ホウレンソウ，小松菜，長ネギなど，なんでもＯＫです。
塩 こしょう バター（油）
＜前日の作り方＞
・じゃがいもは土を洗い落として丸のまま，野菜類は適当な大きさに切りそろえておきます。
（火の通りのことだけを考えてでたらめに切るだけでよいです。あまり細かくしますと，ジャガイモが煮える前に野菜が溶け始めてしまうので注意。）
・大鍋に水を沸騰させ，『お吸い物にしては塩辛いかな？』くらいの加減で塩を入れます。
・野菜を入れ，ジャガイモにお箸の先端がどんどん入っていくくらいの柔らかさになったら，火を止めて中身を出します。
（ゆで汁はチキンスープに使ってしまうことにします。）
・気になるようでしたら，ジャガイモの皮をむいて取り除きます。
・フライパンを熱してバターを敷き，そこにゆでたものを一気に加えます。
・根気よくヘラで野菜とジャガイモをつぶし，パンケーキのように平らにしていきます。
（最初の内はジャガイモがぽそぽそして不安になりますが，根気よくつぶしていくと滑らかになっていきます。
野菜のつぶし具合はお好みで。）
・裏の方に焦げ目がついてきたら，いい加減にひっくり返します。
（結果的にぐちゃぐちゃになってしまっても，どっちみち最後にはみっちりタッパに詰めてしまいますのでお気になさらず！）
・なんとなく焦げ目がついたら出来上がり。冷めてからタッパに詰め込んでおきます。
＜当日の供し方＞
・後述のチキンスープの鍋の中にすっぽり収まる金属製のボウルを用意し，その中に入れます。
・チキンスープが温まったころ，適当に切り分け，深皿の中に入れて，チキンスープを上からかけます。
『チキンスープ』 １０～１５人前
丸鶏 ２羽（手羽など，部分で買うより丸で買った方がお得だと思います。うまくいけば一羽４８０円）
こしょう
バブルアンドスクゥイークで使用したゆで汁
バブルアンドスクィークから流用したマッシュジャガイモ 少々
＜前日の作り方＞
・鍋にゆで汁と水を，薄い塩加減になるわりあいで合わせて入れ，丸鶏を放りこんで火にかけます。
・沸騰したらトロ火の中火にし，アクをとりながら煮て行きます。
・鶏肉が骨離れ良くなったころ，塩コショウで味を付け，マッシュジャガイモを入れてゆるいとろみをつけます。
・冷めてから鍋をしっかり密閉し，こぼれないようにして運びます。
＜当日の供し方＞
・鍋の中にひとかけらのバターを放りこんでから温めます。
・温まったら，丸鶏本体をオタマでつついて肉などをこそげとり，汁と一緒にバブルアンドスクィークの入った深皿にたっぷりよそいます。
アメリカ家庭料理の『チキンアンドダンプリング』の小麦粉団子，ダンプリングを，
イギリス家庭料理のジャガイモおやき，バブルアンドスクィークに替えたものです。
調味料と油脂以外は，備蓄可能な食材をなるべく避けてみました。
チキンスープは，塩味の付いた水でゆでると若干ぱさつく場合がありますので，そのあたりはお好みでどうぞ。
このペアで炊き出しに供したことは，実はありませんが，試作では悪くない感じでした。
ちなみにバブルアンドスクィークにスープをかけたままほおっておくと，『すごいとろみのチキンシチュー』みたいになりますが，
それはそれでおいしかったです。