こと撮影現場というものは,両極端の人が集まりがちです。
神経が鋭敏な気質の方。おおらかな気質の方。
そういった様々な気質の方々が,制作・美術・撮影・演出。それぞれの得意分野で本領を発揮するというわけですね。
しかし食事になれば皆さんいっしょくた。集まって炊き出しをいただきます。
そうなると,それら両極端の気質は『取り分』というデリケートな問題において大きな対立を生むことになります。
『とにかくわしわし食べる人』『等分になっていないと気が済まない人』。
食べ物の恨みは制作現場に亀裂を入れかねないほど深いものです。
ですので,炊き出しにおいてなるべく避けたいのは,『数が決まっているもの』といえましょう。
例えばハンバーグ。さらには,それをパンなんかで挟んじゃうハンバーガー。
これは恐ろしい。足りないのも恐ろしいけれども,あまっちゃったらもっと恐ろしい。
たちまち楽しいお食事の場が,人の器というものが露呈する心理実験の場と化してしまいます。
だからと言って,いつもいつもご飯にどろどろしたものをかけて食べるメニューばかりというのも,やはり士気にかかわろうというもの。
そこで,多少取り分がいい加減でも大丈夫な『パンにはさむやつ』を作ってみました。
いんちきプルドチキン 10~15人前
<材料>
鶏肉 2キロ~2.5キロ
(部位はどこでも結構です。むしろ安い胸肉が,繊維がほぐれ安くて都合が良い気もします。
今回は,丸鶏1羽399円という値段に興奮して,2羽購入しました。)
スパイスラブ(loveではなくてrubの方でございます。もみこむ乾燥スパイス)
※今回も100円ショップで手に入るものだけ使用します
・タイム
・チリパウダー(カイエンペッパーの方ではなく,裏に『メキシコ料理に欠かせない』云々と書いてある類の,混合スパイスのほうです。)
ソース
・黄色いマスタード(洋がらし・和がらしチューブではなく,ホットドッグ何かにかけるような辛くないものです)
・しょうゆ
・砂糖
・ウスターソース
・ケチャップ
※全体に甘めに合わせておきます。
<前日の仕込み方>
・スパイスラブの材料を混ぜ合わせます。目安は,チリパウダーにタイムを,苦味が前に出てこない程度に足す,というかんじでしょうか。
・鶏肉にスパイスラブをまぶし,1時間ほど置いておきます。
(この間に,一緒にはさむコールスローを作るといいかもしれません。コールスローに関しては,こちらをご参照ください。『あら微塵キャベツの砂糖レモンマヨネーズあえ』といった感じのものでございますね。)
・ぴったり蓋の閉じる深なべか圧力なべを火にかけ,油を少量引いてお肉の表面を焼き固めます。
・表面が焼けたら,お水をひたひたの半分くらいまで注ぎ,弱火で蓋をして煮ます。
(スロークッカーが便利,とアメリカの方に教えていただきました。確かに便利そうです。ないけど。)
・1時間くらい煮ると,肉がほろほろほぐれてきますので,鍋の中でほぐしてばらばらにします。
・そこにソースの材料を入れ,軽く煮絡めれば出来上がり。
・蓋をして冷やしておきます。冷えたら,蓋が外れないようにラップでぐるぐる巻きにして止めます。
(鶏のゼラチン質でにこごりのようになるので,こぼれる心配は少ないと思います)
・トングを用意しておくと,鶏肉をとり分けやすいです。
<当日の供し方>
・鶏の入った鍋を温めます。
・各々バンズもしくは食パンを手に取り,鶏とコールスローを適宜のせ,挟んで食べます。
バーベキュー味がパンによく合うものですが,
ソースにしょうゆが入っているせいか,ご飯にコールスローとともにかけて食べてもおいしいものでございます。
冷めてもおいしいので,挟んでおいて時間差で食べても大丈夫。
繊維のほぐれたぐちゃぐちゃした姿は,取り分厳格派にも納得のビジュアル。
それでも足りないとおっしゃる底なし豪快派には,ソースだけあてがっちゃいましょう。