東京初開催の『下品で最低』展。出展レポートをくつした企画代表がお伝えいたします。
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去る2018年3月29日から4月2日まで,東京は神宮前Design Festa Gallery WESTにて展覧会『下品で最低』が開催され,くつした企画はブースを頂いて出展させていただきました。
会期中のべ200人あまりの入場者があり,盛況のうちに終わったと聞き及んでおります。
この展覧会のコンセプトは『18歳未満禁止な類の,ただただ下品なものを一堂に集める』というものでして,そうなりますとおのずと参加者もうわずってこようというもの。
なのでクルーダウンすべく,今回は必要以上におっとり文体でレポートを進めてまいりますね。
それから始めのうちに,本レポート中に掲載されている写真が大変少ないことを申し添えておきます。
文字ばっかりですみません。
さて。
私どもくつした企画は今回,これまで札幌で開催されてまいりました『下品で最低』展にて発表した,『性器が持つ諸機能を性欲充足以外の目的で使用する』ことをコンセプトとした遊具シリーズを,新作を含め,4つまとめて展示しました。
各ゲームの解説は,以下のリンクに随時追加してまいります。
1)バトルニンカツ
2)人類救済トレーニングゲーム オチンチンタテール
3)自由恋愛ロボ スゥインガーOZ
4)花電車秘芸帳 膣トレ地獄編
これは,男性器もしくは女性器を用い,勃てたり絞めたりすることで操作するインターフェイスを用いたゲームでございます。
本来気持ちよくなるための器官を,気持ちよさとは無縁の方向で用いるわけですから,これはもう見返りの無い,ちょっとした嫌がらせと言えないこともありません。
ですが,本能以外の動機,つまり理性だとか反射神経だとかを働かせて性器を用いることで,ヒトはひょっとすると間違った方向に進化できるかもしれない,という罰当たりな思いをほんのり込めたゲームたちでもあります。
今回の新作は『花電車秘芸帳』。
かつてストリップ劇場の出し物として1ジャンルを築いていた,女性器を用いて芸を行なう出し物『花電車芸』の技の数々を,実際に女性器を用いて操作し追体験することを目的としたゲームです。
花電車自体が『性器を存分にさらけ出して用いるのに,芸をすると驚きの声と拍手が起こる』という本末転倒さが魅力の文化でございますから,私どもの性器インターフェイスゲームシリーズにはうってつけの題材ですね。
丁寧な製本がなされた絵本,本物の女性の陰毛が筒の底にあしらわれた『まんげ鏡』,生理用品でつくられたドレスといった1点物の手作り作品から,最新の仮想現実技術を用いたポリゴン美少女との擬似性行為装置まで,実にふり幅の広い展示物でございましたが,よく見ますと展示物は大きく分けて2つの異なった方向性に分類される事が分かります。
1つには,性欲に対して真剣に向き合い、それを満たす事を主軸に置く『下品』。
そしていま1つには,性とその周辺の現象を以って周囲をかき乱すことを目的とした『下品』。
前者が一途な下品だとすれば,後者はトリックスターとしての下品とでも申しましょうか。
そんな中,特に印象的だったのが,オナホールを主軸とした自慰の為の器具を発売されているメーカー『ホットパワーズ』の商品群でございました。
驚くべきは,スタンダードなオナホールだけではない,多彩なラインナップ。
形を保てないほどにやわらかいもの。
小指を入れるのすら痛いほど穴が狭く硬いもの。
さらには半陰陽のオナホールといったもの。
使い方に創造性を要求したり,現実とはかけ離れた刺激を提示したり。
オナホールという実用重視の世界ながらも,そこから一歩引いて個人の性欲の内側に踏み込み,その世界を引っ掻き回すようなトリックスター的な要素をも併せ持つ商品たちでございました。
また,ユーザーの皆さんの意識にも,『如何に用いるのか』や『うまく使いこなせた喜び』を熱く語られるなどといった姿から,『真剣に快楽を追求する』という姿勢と『特異なオナホールによって性が引っ掻き回されるのを楽しむ』という姿勢とが同居していることがうかがわれました。
一般には受け容れがたい独自の世界を追求していく事を通し,自らの意思で既存の社会や倫理,さらには肉体や生理からどんどんかけ離れていく。
そういった人々や現象を取材し,映像などの形で具体化していく事を主題に据えて活動を続けている私どもくつした企画にとって,この姿は大変魅力的でした。
また,同じく大変に心惹かれましたのが,成人漫画家・命わずか先生の展示でございました。
成人向け漫画における要件,つまり射精や絶頂という要素を,現実にはありえない職業に仮構することで,一般的な性行為とは全く次元の違う地平に昇華する。
その発想と手法から,個人的には,成人漫画界随一の奇想作家とお呼びしたい方でございます。
『睾丸を引っ張って収穫する』という性癖・願望を大きな主題として,デザインからモチーフまでを纏め上げた今回の展示は,もはや『きんたま収穫』という世界観に則ったプチ幻視的空間(visionary environment)といった趣でございました。
折角大人になったわけですから,性に関してはどんどんねじれこじらせていきたい。
そうやって,こじれた末の先の先まで見てみたい。
ひずんだ大人であるところの当方は,やはり今回も,特にトリックスターとしての『下品』に未来を感じたのでした。
それが明るく正しい未来なのか否かについては,また別の話ではございますが。
主催のドラクエ企画山口様をはじめ,関係者の皆様,そしてご来場いただいた全ての皆様に深く感謝いたします。
くつした企画
黒田 拓